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知財部(知的財産部)へ就職・転職のおススメの業界・業種ランキングTop3
こんにちは、企業内弁理士のタクパパです。
先日、ある就職セミナーで大学生や大学院生とお話する機会がありました。
そのセミナーの中で
「知財に興味があるんだけど、どの業界がおススメですか?」
という質問をされる学生さんが多かったので、今日は僕が考える知財部(知的財産部)に就職・転職する際のおススメの業界についてトップ3に絞って説明しますね。
あくまでも僕個人の勝手な考えでして、間違いもあるかもしれませんので、そこはご容赦下さい。
第1位:電機業界(三菱電機、パナソニック、シャープ、東芝など)
この電機業界は三菱電機、パナソニック、シャープ、東芝などが代表企業でしょうか。
ここでは「特許の係争の多さ」と「知財部員の多さ」に分けて説明します。
特許の係争の多さ
まず電機業界がおススメの理由として、他の業界と比べて特許出願件数が多いという点が挙げられます。
たとえばパナソニックはJ-PlatPatで2017/4/1から2018/3/31までの出願日(つまり1年間)で検索すると5026件がヒットします。
なんでそんなに特許出願件数が多いのかといえば、この電機業界内ではライバルメーカー同士の特許の係争が多い(あるいは多かった)ということだと思います。
特許の係争といっても訴訟(裁判)だけでなく、特許権の侵害警告とか、特許の交渉とかもありますね。
実はこの特許の係争が多いというのが重要で、これを経験しないと、そもそもどのような特許を取得したら良いのか、どのように特許を活用できるのか、が分かりません。
逆に言えば特許の係争を経て、ライバルメーカー(※パテントトロールとかの場合もありますが)に勝つために吐きそうになりながら検討した経験のある知財屋は、この業界では本当に優秀だし、最強ですね。
こればかりは実際に経験してみないと分からないことで、いくら研修を受けても、何件も明細書を書いても学べることではないですね。
なんで吐くまで検討するのかといえば、それこそ負けられない戦いだからです。
仮にライバルメーカーから特許権侵害で訴訟を起こされて、裁判で「(自社の)〇〇装置を製造販売してはならない」とか「(自社の)〇〇装置を破棄せよ」なんて判決が出されたらどうでしょう?
まあ普通はクビですよね・・。
僕もそれなりに経験を重ねた方だと思いますが、他の人が書いた特許を読んでいて、将来の他社への係争を考慮した明細書かどうかは、読んでみればすぐに分かりますね(もったいないなぁとよく思います・・)。
知財部員の多さ
この知財部員の多さも重要だと思いますが、電機業界の知財部員の多さは業界1位だと思います。
有名なのはパナソニックで一時は900人もの知財部員がいたと聞いたことがあります。
ただ2014年にパナソニックは、知財を専門に取り扱う子会社(パナソニックIPマネジメント)を設立し、多くの知財部員をパナソニックIPマネジメントに集約させましたね。
それでも今でもパナソニック本体の知財部員の人数は200名とかいるのでしょうか(※正確な人数は分かりませんが)。
ここで、知財部員の人数の多さについて、まず新卒で入社した場合ですが、知財部員が多いということは社内教育が充実している場合が多いと考えますね(※僕自身がそうでした)。
あと近い年代の先輩も多いので、分からないことがあっても色々と質問しやすいということもあります。
特に同僚や近い年代の先輩・後輩と議論をする機会が多いということも重要ですね。
この議論を繰り返すことによって成長につながると僕は考えています。
逆のパターンでやたらと年齢層の高い知財部にポツンと新入社員が配属されると、なかなかおじさま方と議論というのもしにくいですよね。
僕も知り合いにこういう方がいますが、その方とお話していると、あまり成長できていないのかなと思ったりします。
あと、転職で来られる方にとっては、当たり前ですが、知財部員が多いということは、転職で採用する人数が多いということで、採用されやすいということになるかと思います。
もちろん転職への応募人数にもよりますが、電機業界が特に人気の業界とも思えないので、そこまで応募人数が多いということもないのかな(※転職し易い)と思いますね。
第2位:化学業界(富士フイルム、三菱ケミカル、住友化学)
この化学業界は富士フイルム、三菱ケミカル、住友化学などが代表企業だと思います。
ここでも「特許の係争の多さ」、「知財部員の多さ」に分けて説明します。
特許の係争の多さ
化学業界も電機業界ほどではないにしてもそこそこ特許の係争が多い業界なのかなと思います。
2014年には、富士フィルムが株式会社DHCに対し、「DHCアスタキサンチンジェル」などの特許権侵害訴訟を提起した裁判が有名ですかね。
結局、↓のDHCのニュースリリースにあるように知財高裁でDHCの勝訴が確定したようですね。
https://top.dhc.co.jp/contents/guide/newsrelease/pdf/171025.pdf
電機業界ほどではないにしても、それなりに特許の係争があるので、化学業界も知財屋として成長できる業界なのかなと思います。
あと重要な点として、化学業界の方が電機業界に比べて業績が良いところですね。
東芝やシャープなど、言うまでもないですが、業績はよろしくないですよね。
というか残念ながら、もう日本企業ではなくなってしまいましたし。。
三菱電機はまだ頑張っていますが、パナソニックの業績もぎりぎりのところでなんとか踏ん張っているといったところでしょうか(営業利益率は5%を切ってますね)。
それに比べると化学業界の業績は良いと思います。
なので、当然、給料だって電機業界に比べると良いですし、業績が良いということは知財についても大きく投資ができるので、色々と経験できる業務の幅が拡がるといって良いでしょうね。
だからなのか、僕はこの化学業界の知財部員に知り合いが多いですが、電機業界に比べて元気な人が多いです笑
ただこれはあくまでも僕の感想であって、客観的に示すデータは何もないのですが。。
知財部員の多さ
結論からいうと、化学業界の知財部員は電機業界ほど多くありません。
なぜかというとそもそもの特許出願件数が電機業界に比べて少ないためです。
最大手の富士フイルムでも1年間で(J-PlatPatで2017/4/1から2018/3/31までの出願日で検索)、1170件の出願なので、電機業界に比べるとそこまでの特許出願件数ではないですね。
これはなんでかというと、化学業界の代表的な特許出願の内容といえば、樹脂の素材だとか、繊維の素材だとか、圧電フィルムの素材とかですよね。
これって↓のような化学式で表されるのですが、仮に富士フイルムがこの内容でその樹脂の素材の「特許請求の範囲」を記載して特許出願をして、特許が成立したとしましょう。
それで、仮にライバルメーカー(たとえば三菱ケミカル)がその特許発明(「特許請求の範囲」に記載の発明)を実施したとしても、富士フイルムはその事実を突き止めることができるでしょうか?
たとえば三菱ケミカルがその樹脂の素材そのものを販売しているとしたら、富士フイルムがそれを購入して成分分析を行えば、特許発明を実施しているか、どうか分かるかもしれません。
でも普通はたとえば、別のメーカー(たとえばブリヂストン)が三菱ケミカルからその樹脂の素材を購入して、なんらかの加工をしたうえでタイヤを製造して、これが自動車に組み込まれて世の中に販売されたりします。
そしてブリヂストンがタイヤを製造するときの加工によって三菱ケミカルの樹脂から成分などの特徴が変わっていたとします。
すると、もはや富士フイルムは三菱ケミカルが特許発明の実施をしたかどうかの事実を突き止めるのは難しいですね。
というわけでこの化学業界は、ライバルメーカーの特許発明の実施有無を突き止めるのが難しい傾向にあるといえるかなと思います。
それで、そのために特許の係争も電機業界に比べると少ないのかなと考えます(※但しこれも僕の考えで、客観的なデータを確認したものではありません)。
この特許の係争が比較的少ないことに相まって特許出願件数も電機業界に比べると少なくなるのかなと思います。
第3位:自動車業界(トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車)
この自動車業界は、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車などが代表企業だと思います。
ここでも「特許の係争の多さ」、「知財部員の多さ」に分けて説明します。
特許の係争の多さ
この自動車業界は電機業界や化学業界にあったライバルメーカーとの特許の係争はないとは言いませんが比較的少ないと思います。
自動車メーカーといえば、どこも大企業で結構、なあなあな関係になっている印象です。
ある自動車メーカーの僕よりもだいぶベテランの知財部の方に伺ったことがあるのですが、
「もう10年以上、前にほとんど全部の自動車メーカーとは散々やりあった」
とおっしゃってました。
これだけでは断定はできませんが、特に日本国内の自動車メーカー同士で小競り合いしても意味ないよね、という業界の風潮になっているのかなと感じましたね。
どちらかというと、昔は電機業界をターゲットにしていたパテントトロール(NPE:Non-Practicing Entity(特許不実施主体))が近年では自動車業界をターゲットにしており、これの対策に大忙しかと思います。
自動車業界はまさに大変革期を迎えており、話題の技術でいえば、自動運転やコネクティドカーがありますよね。
要するに自動車自体がネットワークに繋がって、膨大なセンサ、ネットワークを介して情報のやり取り(つまり通信)が発生するわけです。
この情報通信技術というのはパテントトロールの得意なところで、標準必須特許(SEP)を取得してしまう、あるいはどこかの企業から購入してきてしまって、がつがつとトヨタ自動車などの自動車メーカーを攻める(※訴訟するとか)わけですね。
古くはCDMA(※昔の携帯電話の通信方式)の世界を特許で支配したQualcommが有名です。
なお、Qualcommは事業をしているので、パテントトロールでもNPE(Non-Practicing Entity(特許不実施主体))でもありませんので、この点は注意です。
ともかく、自動車業界の知財部としては、いかにこのようなパテントトロールやNPE(Non-Practicing Entity(特許不実施主体))との係争を避けるか、あるいは、係争をいかに収束するかの、いわゆる対策の仕事がメインとなるでしょうね。
これはこれで面白いというか、知財屋さんとしては貴重な経験だと思います。
ただ個人的には守りよりも攻める方が面白いと思うので、僕にはちょっと向いていないのかなと思いますね。
知財部員の多さ
これは難しいところなのですが、自動車業界の知財部員はそこそこ多いと思いますが、特許出願件数に対しては、知財部員の人数が少ないのかなと思います。
あくまでも電機業界と比較しての話ですが。
たとえばトヨタ自動車は1年間で(J-PlatPatで2017/4/1から2018/3/31までの出願日で検索)、6832件も特許出願をしています。
それで2018年の売上が29兆円とかの桁外れの売上ですよね。
単純に売上で比較すると、パナソニックの8兆円に対してトヨタ自動車は4倍近いです。
しかし、トヨタ自動車の知財部員がパナソニックの知財部員の4倍もいるかというと全然、そんなことはなくて、へたするとパナソニックの知財部員の人数の方が多いかもしれません。
おそらくトヨタ自動車の知財部でも100名~200名とかではないでしょうか。
ただし、トヨタ自動車には知財を取り扱う専門の子会社がいて、結構、その子会社の方で特許出願をハンドリングしていることが多いと聞いたことがあります。
なのでトヨタ自動車の知財部の僕のイメージとしては、特許云々というよりは、もっと事業部に近い経営企画とかの仕事をしていることが多いのかなと思います。
ちなみに本田技研工業の知財部にはどっぷりと発明抽出の業務を担当する方もいるようです。
なので本田技研工業の知財部であれば、いわゆる明細書書きや権利化の能力も身に付けることができるかもしれません。
ただトヨタ自動車と同じく、自ら特許で攻めにいくということは本田技研工業でも今はあまりないように思いますね(昔は世界中で闘っていたと旧本田知財部長がおっしゃってましたが)。
というわけで自動車業界は他の業界とは異なる特有の事情が色々とありますが、知財(特許)がビジネスの成否を左右する極めて重要なものという位置づけであり、仕事としては面白いと思いますよ!
本記事のまとめ(知財部への就職・転職のおススメの業界ランキングTop3)
以上、長々と知財部(知的財産部)へ就職・転職のおススメの業界・業種ランキングTop3ということで、電機業界、化学業界、自動車業界について僕なりの考えで(勝手に)説明しました。
これでも全然、書き足りないのですが笑
それ以外の業界でもおススメの業界はまだまだあるので、別の機会に記事を書きたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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