こんにちは、ベテラン企業内弁理士のタクパパです。
テレビを見ていると今日はまたしても大雨のようですね。
この度重なる天災は厳しすぎて、台風の被災地の方々をテレビなどで見ていると、胸が痛みます。。
僕には募金くらいしかできませんが、一日も早い復興を願うばかりです。
さて、今日は優秀な弁理士(特許事務所の仕事内容)について僕なりに説明したいと思います。
この記事のもくじ
優秀な弁理士(特許事務所)の仕事内容とは?なんちゃって知財コンサルしていませんか?
以下、優秀な弁理士(特許事務所)の仕事内容とはなんなのか、ベテランの僕なりに説明しますね。
中には、「いやいや、どんな弁理士でも行う発明のヒアリングでしょう?」のような仕事を知財コンサルと称して行う弁理士さんもいらっしゃるようです。
以下の内容では、当たり前とも思える内容もあるかと思いますが、そんな内容であっても意外に苦手な弁理士さんが多いようです。
逆にこの辺りが苦手ということであれば、これを克服して得意分野とすることで他の弁理士に対し一歩も二歩も進んだ弁理士になれるのではないかと考えています。
発明者との積極的なコミュニケーション
そんなの当たり前じゃないか!と思うかもしれませんが、意外にもこれが苦手な弁理士さん多いです。
個人的な印象では、あまり人とのコミュニケーションが好きじゃないという弁理士さんが多いような気がします。
どの弁理士も発明者と発明の内容について打ち合わせをしたうえで、特許出願書類(明細書や特許請求の範囲)の執筆作業に取り掛かると思います。
僕の会社では基本的にはこの弁理士と発明者との打ち合わせは1回で済ませることが多く、だいたい1時間から1時間半くらいでしょうか。
ただ僕に言わせると、たった1回の打ち合わせだけで発明者とのコミュニケーションを終わりにして特許出願書類を仕上げようと思うことに無理があるんじゃないかなと。
僕の会社は知財部も明細書を執筆する、いわゆる内製もやってますので、僕自身もしょっちゅう明細書を作成します。
経験者は分かると思いますが、明細書やクレーム(特許請求の範囲)について深く考えながら作成していると次から次へと新しいアイデアが浮かんできますので、「このカテゴリーのクレームを追加した方が良い」とか、「こんな別のアイデアもクレームに追加した方がいいのではないか?」とか色々な提案が湧いてくるものです。
これって弁理士の最も基本的な付加価値の一つですよね。
発明者の言う通りの内容をただただ明細書にするというのは、ただの代筆屋さんで、優秀な弁理士のする仕事ではないと僕は思うのです。
僕が明細書やクレームを作成する際には、なんやかんやで1件の出願につき4,5回は発明者に電話なりメールで問い合わせをすることがほとんどですね。
特許事務所は発明者に問い合わせがしにくいとの声を聞いたりしますが、僕にはちょっと理解ができないです。。。
もちろん中には「忙しいから連絡してこないで」という発明者とか、知財担当者が発明者への問い合わせを謎に拒否するとかいうケースもあるとは思うので、そういう場合であれば仕方ないと思います。
ただ誰もそんなことを言っていないのに、弁理士さん自ら気を使って(?)発明者に連絡するのを避けようとするのは、それはちょっと違うんじゃないかなと思うわけですね。
なお、たった1回の打ち合わせで完璧な明細書、クレームに仕上げてくれる優秀な弁理士さんもいるにはいらっしゃいます。
しかし、そうではないのにあまり深く理解することなく、あるいは上記のような深い検討をすることなく、ほどほどの明細書、クレームで終わらせる弁理士さんが多いのかなと、常日頃、彼らの特許出願書類をチェックしていて残念ながら感じてしまいます。。。
なので、当たり前かもしれませんが、もっと発明者とのコミュニケーションを密にして、素晴らしい特許(※競合がライセンスを欲しくなるような)に仕上げることを心掛けた方が良いのかなと僕は考えますね。
たぶんそんなに1件1件に時間をかけてられないよということなんだとは理解しながらも一応、理想を言ってみました。
知財部員との積極的なコミュニケーション
これは企業の方針によるところがありますが、僕の会社では外部の特許事務所に特許出願を依頼した場合、発明者と弁理士との打ち合わせに知財部員も参加するかどうかは知財部員に任されています。
僕の場合、重要な発明であれば、打ち合わせに参加するようにしていますが、そうでなければ弁理士さんにお任せとすることが多いです。
特に忙しいときはなかなか発明者と弁理士との打ち合わせに参加できない時期が続いたりしますが、そうすると、弁理士さんと直接、話す機会がほとんどなくなってしまいます。
なので場合によっては、何年も特許出願を依頼しているのに一度も直接はお会いしたことのない弁理士さんがいたりします。
ただ僕のような知財部員がこの弁理士さんは良いなと思ったら、当然、その人を指名で特許出願を発注しますので、その弁理士さんの評価というのか、成績というのは結局、担当の知財部員次第ということになるわけですね。
特許事務所でもクライアントから指名の多い弁理士の評価は高くなるでしょうし、歩合制の特許事務所であれば、指名数に応じて給料だって変わるはずです。
それなのに、僕に会ったことがなければ担当の知財部員(※僕のこと)にアピールもできないし、僕だって会ったことのない弁理士さんを指名することはないので、そんな弁理士さんの心理がちょっと理解できなかったりします。
というか、そういう弁理士さんはあまりやる気がないのかなと思ってしまったりしますね・・。
なお、知財部員によって弁理士や特許事務所に求めるものは異なりますし、特に明細書やクレームは知財部員の好みによって人それぞれ意見が全く異なることが多いため、やはり直接、知財部員と議論をして、その知財部員が何を求めているのか、理解しないと、要求に応じることはなかなか難しいと思いますね。
なので、知財部員と積極的にコミュニケーションを取ったうえで、知財部員のニーズを正確にキャッチアップし、これに応じたアウトプット(たとえば明細書やクレームなど)を出していくことを心掛けるのが弁理士にとっては重要だと僕は考えます(ちょっと下衆な話、お給料アップにも^^)。
知財専門ではない知財担当者との積極的なコミュニケーション
知財部が存在しないような中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業がクライアントである特許事務所の場合、一応、知財担当者ではあるものの知財専門ではなく、特許の実務などあまり知らない方がクライアント側の窓口であることが多いです。
知財業界全般に言えることなのですが、たこつぼと揶揄されてしまうように、この業界は非常に閉鎖的で事なかれ主義が充満していると、常々、感じます。
つまりあまりにも専門的でマニアック過ぎるため、外部から見ると、異色の業界で近寄りがたいということがあるようです。
それに甘んじてなのか、知財部員や特許事務所は、知財の素人にも分かり易く説明するということができない人がむちゃくちゃ多いです・・
僕の会社でもよくあるのが、知財部の上層部が作成した開発部向けの説明資料を見ていて、知財部の僕が見ていてもよくわからないのに、こんなものを知財素人の開発部が見たってなんのこっちゃ分からんだろう、というやつです笑
話を戻して知財部が存在しないような中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業になると、弁理士さんにお任せというところが多く、基本的には弁理士さんのやりたいようになっていることが多いようです。
逆にいうと、どの弁理士さんに任せてもよく、たまたま、最初に依頼した弁理士さんに継続して依頼しているということが多いというではないでしょうか(たぶん)。
ただ仮にそういったスタートアップ企業のキャッシュが厳しくなってくると、特許に投資どころではなくなり、特許出願の依頼はなくなるので、そのクライアントからの仕事はなくなることになりますよね。
ただ、そういう事態になるっていうのは、結局、その弁理士が特許業務の代理以上の付加価値が提供できなかったからということになるのかなと僕は思うわけです。
弁理士にとっての提供価値ってなんでしょうか、特許出願でしょうか?
おそらくそれはちょっと違のではないでしょうか。
僕の考えでは、特許出願というのはあくまでも手段であって、弁理士はクライアントのビジネスを勝利に導くことをゴールとして活動すべきではないかと思います。
それであれば、スタートアップ企業のキャッシュが厳しくなったとしても、そもそもそうなる前にビジネス戦略を変更するように提案できたかもしれないし、知財を活用した融資の手段を提案できるかもしれないですよね。
あるいは特許を真似している競合からのライセンス収入獲得を提案できるかもしれないし、他のやるべき仕事がいくらでも出てくる可能性があるんじゃないかと思うのです。
これってまさにWin-Winの関係といえるのではないでしょうか。
このように弁理士自身がクライアントのビジネスを勝利に導くためには常日頃から知財専門ではなくとも知財担当者と密にコミュニケーションを取り、自ら考えたそのクライアントのビジネス戦略を提案することが非常に大事だと僕は思うんですよね。
もしコミュニケーションを取っていなかったら、そんな提案、できるわけもないですし、提案したところで採用される可能性はおそらく薄いですよね。
なんちゃって知財コンサルではない価値のある知財コンサル
ちょっと前のパテント誌で見たのですが、経産省の中小ベンチャー企業支援の重点施策で、知財戦略の経営課題に対する相談機能として、全県で「知財総合支援窓口」というものが設置され、知財コンサルの専門家として弁理士が対応しているそうです。
しかし、各地方経済産業局やその各県の知財総合支援窓口から弁理士に対する苦情があるようで、「特許出願の手続の助言に終始する」、「出願することのみを熱心に勧める」、「企業経営と知財との関係の説明がない」などでした。
これは僕に言わせると、むっちゃ弁理士あるあるだなと思います笑。
コンサルって簡単にいえば企業の課題の解決策を経営者に提案し、その企業の発展に寄与することですよね。
知財コンサルだって同じことで単にその手段として知財(特許には限られません)を活用するということだと思います。
それにも関わらず上記のような「特許出願の手続の助言に終始する」ではコンサルでもなんでもなく、こう言ってはなんですが、苦情がくるのも当然ではないかなと思ってしまいます。
なお、知財(特に特許)は中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業にとって強力な武器になりえるので、これをベースにコンサルを行うのは間違いではないと僕は思います。
そして、最終的にその特許をどのように活用してビジネスを勝利に導くか(勝利とまで言わずとも有利にもっていくか)の絵を描いてあげることが重要で、これを前提として初めて、そのゴールを達成するためには、どのような特許を取得すべきだという話になるわけですね。
僕はこれまで企業内で様々な事業に対し、知財コンサルを実施してきましたが、事業や技術、競合、グローバルか否かなど様々な要因によってやり方は千差万別で非常に難しく奥深いです。
ただ逆にいうと知財コンサルの正しいやり方なんて誰も知らないので、ある意味、自由にできて面白いということもできます^^
僕も自分の提案が担当していた事業所の幹部に受け入れられて事業化にこぎつけたものもありますが、大変、感謝されましたし、僕も非常にやりがいがあって楽しかったですね。
というわけで単なる明細書書きに留まらない新たな価値を提供する弁理士を目指すのであれば、なんちゃって知財コンサルではなく、クライアントのビジネスを成功に導く本当の意味での知財コンサルをめざしましょう!
この記事のまとめ
1.優秀な弁理士、特許事務所の仕事内容は?
1-1.発明者との積極的なコミュニケーション
発明者とのコミュニケーションを密にして、素晴らしい特許(※競合がライセンスを欲しくなるような)に仕上げることを心掛けた方が良い。
1-2.知財部員との積極的なコミュニケーション
知財部員と積極的にコミュニケーションを取ったうえで、知財部員のニーズを正確にキャッチアップし、これに応じたアウトプット(たとえば明細書やクレームなど)を出していくことを心掛けるのが重要。
1-3.知財専門ではない知財担当者との積極的なコミュニケーション
弁理士自身がクライアントのビジネスを勝利に導くためには常日頃から知財専門ではなくとも知財担当者と密にコミュニケーションを取り、自ら考えたそのクライアントのビジネス戦略を提案することが非常に大事。
1-4.なんちゃって知財コンサルではない価値のある知財コンサル
単なる明細書書きに留まらない新たな価値を提供する弁理士を目指すのであれば、なんちゃって知財コンサルではなく、クライアントのビジネスを成功に導く本当の意味での知財コンサルをめざしましょう!
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