知財部とは?知財部の仕事内容(明細書作成、特許出願)を説明します

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知財部とは?知財部の仕事内容(明細書作成、特許出願)を説明します

 こんにちは、ベテラン企業内弁理士のタクパパです。

 毎年、何件も特許を出願するような企業の場合、社内に知財部(知的財産部、知的財産センター、知財課、特許部などと言います)が存在するのが普通です。

 この知財部の重要な仕事内容の一つに明細書作成、特許出願があります。

 以前に↓の記事で発明発掘について説明しましたが、これの続きという位置づけですね。

 https://www.inhouse-patent-attorney.com/job-description/

 今回は明細書作成、特許出願について説明したいと思います。

知財部って明細書作成、特許出願まで行うの?

 その昔はこれらの明細書作成、特許出願は外部の特許事務所に任せて、社内の知財部は別の仕事を行うというスタイルが多かったようですが、最近では社内の知財部が明細書作成から特許出願の仕事まで行ってしまうということが増えているようです。

 なお、2019年9月30日時点のデータで弁理士11504人のうち2730人(つまり約4分の1)が会社勤務ということで要は企業内弁理士です。

 つまり、社外の特許事務所に任せる割合を減らして内製案件を増やしている企業が増えているとみるべきでしょうね。

 僕の会社もそうですが、社内の知財部員(社員)が明細書を作成し、特許出願まで行うケースがたくさんあります。

知財部の組織形態(特許部、ライセンス部、戦略部、特許事務等)

 明細書作成、特許出願の話の前に簡単に知財部の組織形態について簡単に説明しますね。

 まず知財部を大きく分けると特許を専門に扱う特許部と、特許のライセンスを扱う特許ライセンス部とに分かれます。

 もちろん知財部ですから、特許だけではなく、商標や著作権、意匠、営業秘密など他にも色々とあるのですが、ここではわかりやすく特許にしぼっています。

 特許ライセンス部とは自社の特許を他社にライセンスする、つまりその特許の使用を許諾する際の条件の交渉や契約書を作成したりする部署のことです。

 なお、特許部の実務では特許庁との複雑な手続の知識が必要なので、特許事務部門もあるのですが、ここでは特許事務部門も特許部に含まれるものとします。

 そうすると会社のビジネス形態にもよりますが、知財部の中で特許部が最も多く、僕の肌感覚でいえばだいたい9割近くが特許部になるのかなと思います。

 残り1割にライセンス部の他に戦略部とかが含まれる感じですね。

 ただ戦略部はその名の通り知財部の戦略を考える部署ですが、こういった戦略部が存在するのはそれなりに知財部も大きい大企業くらいかなと思います。

知財部に明細書作成は必要な能力(スキル)?特許ライセンス部は?

 上記の知財部の組織形態の中で、明細書作成のスキルが必要になるのは当然、特許部です。

 ライセンス部も明細書作成の能力があった方が良いとは思いますが、実際には明細書作成実務は未経験という場合の方が多いですかね。

 というかライセンス部は文系出身の方が多いからか、特許の明細書を読むのも嫌いという方もいたりします笑

 それで特許部に明細書作成のスキルが必要かどうかという点ですが、僕は必要だと思います

 もちろん特許部の仕事は明細書作成だけではなくて、発明の発掘や、特許出願後の権利化(拒絶対応)、さらに特許取得後の特許の活用であったり、さらには他社の特許への対応だったりとさまざまなので、明細書作成だけを行っているわけではありません。

特許ってどうやって取得できるの?特許取得までの手続(拒絶理由、拒絶査定)
ベテラン企業内弁理士が知財部の特許取得までの手続(拒絶理由、拒絶査定)について説明します。

 ただし、特許に関するいずれの仕事も当然、特許が関連することになり、明細書作成のスキルはそのベース(根幹)となるものだと思うわけです。

 特許というのは面白い権利で、明細書の作成方法によって、特許の価値が良くなったり悪くなったりと変化します(おそらくそういう性質の権利は他にはないと思います)。

 そのため、明細書作成スキルによって、特許の価値が変わるわけですが、ただこれは実際に明細書を作成してみないと、ちょっと理解しにくいものかなと思いますね。

 それで特許は企業の財産ですから、明細書作成スキルが高ければ、自社が有する財産価値を高めることができるわけですから、明細書作成スキルが必要なのは当然といっても良いのかなと僕は思いますね。

 また、その特許の活用も重要な特許部の仕事ですが、明細書を作成したことがなければ特許の価値が分からないとすると、ちょっと仕事にならないですよね(あるいは良い仕事は難しいのではないでしょうか)。

明細書作成の能力(スキル)がないと知財部への就職、転職は難しい?

 結論からいうと明細書作成の能力(スキル)はあった方が知財部(特許部)への就職、転職は有利にはなりますが、なくても大丈夫だと思います。

 結局、明細書作成のスキルというのは技術文書を作成するスキルになるので、特にエンジニア出身で特許の明細書を書いたことはないけど、論文を書いたことはあるとか、学会で発表したことがあるとか、そういった経験があれば、明細書作成の素養はありますので、明細書作成スキルを早く身につけやすいといえるかと思います。

 あと上記したものとちょっと矛盾してしまいますが、実際には明細書作成のスキルの低い特許部の方はたくさんいます。

 なんでかというと、明細書作成の高いスキルがさほど求められない分野もあるからなんですね。

 つまり、明細書作成の高いスキルが必要な分野というのは、特許の活用が盛んな分野になります。

 たとえば最近では、任天堂がコロプラの「白猫プロジェクト」に対し、任天堂の特許権を侵害しているということで、特許権侵害訴訟を提起していますよね。

 特許権侵害訴訟は特許の活用の最たるものですが、仮に任天堂の知財部で特許の明細書を作成する仕事をするような人の場合、極めて高い明細書作成スキルが必要になります。

 簡単にいうと、明細書作成スキルの低い人が作った特許では、特許権侵害訴訟に負けてしまうからです。

 ただ一方で特許の活用(訴訟)などが少ない分野であれば、明細書作成スキルに重きはおかれないかと思います。

 どの分野が特許の活用が少ないかという点ですが、そもそも日本(年間約150件)は米国(年間約6000件)や中国(年間約9000件)に比べて極端に特許の訴訟件数が少ないのですが、やはり特許の侵害を見つけるのが難しい分野は特許の活用が少ないかと思います。

 たとえば、工場内のシステムを制御するPLC(Programmable Logic Controller:モータ等を制御する装置)とかNC装置(Numerical Control:ロボット等を制御する装置)ですとか、あるいは航空宇宙業界とかでは、特許の侵害を見つけるのは難しそうと思いませんか?

 でも特許は出願しているわけで、ここの専門の特許部もあると思います。

 こういった分野であれば高い明細書作成スキルは不要かもしれません。

 なので、仮に未経験で知財部へ転職を考えているのであれば、こういった分野が狙い目になるかもしれませんね。

明細書作成と特許出願について、特許事務の仕事内容とは?

 特許事務の仕事も色々とありますが、明細書作成に関連するところだけでいえば、特許部が作成した明細書などの出願書類の書式を整えて特許庁に対して出願する手続を行うのが特許事務の主な仕事です。

 ここでは特許出願の詳しい内容の説明はしませんが、基本的にはウェブ上で電子出願により特許出願の手続を行います。

 特許庁は明細書などの書類に対して、書式を細かく定めていますから当然、これに合ったものに書類を修正しないといけません。

 基本的には専用のソフトを使って特許庁提出用に出願書類(明細書や図面)を修正しますが、特に図面の修正がちょっと面倒ですかね。

 あとは特許出願時にかかる費用には出願料(14,000円※2019年11月現在)がありますが、これの支払い方法も電子現金納付(ペイジーによる支払い)だとか、 予納      (特許印紙を特許庁へ郵送)だとか色々とあるので、これも間違いのないように納める必要がありますね。

本記事のまとめ

知財部とは?知財部の仕事内容(明細書作成、特許出願)を説明します

1知財部って明細書作成、特許出願まで行うの?

 その昔は外部の特許事務所に任せていたが、最近では社内の知財部が明細書作成から特許出願の仕事まで行ってしまうということが増えている

2知財部の組織形態(特許部、ライセンス部、戦略部、特許事務等)

 特許を専門に扱う特許部が約9割で、残り1割に特許ライセンス部や戦略部などがある。

3知財部に明細書作成は必要な能力(スキル)?特許ライセンス部は?

 特許部には明細書作成のスキルが必要

4明細書作成の能力(スキル)がないと知財部への就職、転職は難しい?

 明細書作成の能力(スキル)はあった方が知財部(特許部)への就職、転職は有利だが、なくても問題なし

5明細書作成と特許出願について、特許事務の仕事内容とは?

 明細書作成に関連するところでは、特許部が作成した明細書などの出願書類の書式を整えて特許庁に対して出願する手続を行うのが特許事務の仕事。

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