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野口五郎さん特許(テイクアウトライブ)取得にNHK「ごごナマ」で言及
こんにちは。
企業内弁理士のタクパパです。
11月12日にNHK総合で放送された「ごごナマ」という番組で、野口五郎さんがライブ動画配信システム(テイクアウトライブ)を自ら開発して特許を取得したことについて語ったそうですね。
僕はこの特許のことを全く知らなかったので、どのような特許なのかなと思って調べてみました。
また、この特許によって、どのような経済的効果があるのか、考えてみたので、今回はこれについて説明したいと思います。
野口五郎さん特許(特許6091357「テイクアウトライブ」)の概要

↑の図面は野口五郎さんの特許6091357の特許となった「特許請求の範囲」に関連する図面です(特許6091357の図12)に僕が赤字で各構成の意味を追記したものです。
なお、「特許請求の範囲」の記載が非常に長いので、省略しますが、気になる方は上記リンクからご確認下さい。
また「特許請求の範囲」の内容が非常に読みにくいので、内容をざくっといいますと、実際の野口五郎さんのコンサートで販売される「テイクアウトライブカード」を考えると分かりやすいと思います。
ちなみに「テイクアウトライブ」は登録商標です。
なお、以下の説明は、理解しやすくすることを重視しており、実際の特許の内容に対して正確性に欠けますのでご理解下さい。
「テイクアウトライブカード」にはQRコード(※登録商標)が記載されており、「テイクアウトライブカード」を購入したファンの方はスマートフォンなどで、そのQRコードを読み取ることにより、コンサートの動画を見ることができるというものです。
以下、この特許6091357を「テイクアウトライブ」というニックネームで呼ぶことにします。
ただし、注意点として、野口五郎さんの特許6091357で、「テイクアウトライブ」のコンセプトそのものを特許にすることができたかというと、それはさすがにできなかったようです。
「特許請求の範囲」は特許庁の審査の過程で補正されており、「テイクアウトライブ」のコンセプトに加えて、別の観点を追加した内容にて特許となっています。
別の観点というのは簡単にいえば、「テイクアウトライブカード」を購入したユーザが機種変更をした場合であっても購入した「テイクアウトライブカード」のQRコードで動画を確認することができるようにするというものです。

野口五郎さん特許(特許6091357「テイクアウトライブ」)の審査経過

野口五郎さんの特許6091357(「テイクアウトライブ」)の↑の審査経過を見てみますと、野口五郎さんは2013/06/27にこの「テイクアウトライブ」の特許出願をしています。
ちなみに野口五郎さんの本名は佐藤靖さんで、「テイクアウトライブ」の特許出願(特願2013-134942)は佐藤靖さんの出願人名義になっていますね。
そして佐藤靖さんは2016/05/30に「出願審査請求書」を特許庁に提出すると同時に「早期審査に関する事情説明書」という書類を特許庁に提出しています。
これらは、要するに特許庁の審査官に
とお願いするための手続です。
この「早期審査に関する事情説明書」を提出することで、僕の経験ではだいたい3~4ヵ月で審査の結果が通知されますかね。
この「テイクアウトライブ」の特許出願(特願2013-134942)では「早期審査に関する事情説明書」を提出してから約4か月後の2016/09/26に残念ながら「進歩性違反による拒絶理由通知」がされています。
「進歩性違反による拒絶理由通知」に対して2016/11/09に手続補正書・意見書を提出して審査官に反論した結果、2017/02/01にめでたく特許査定になったというものですね。
特許になってから2年半ちょっとなので、結構、最近の話ですね。
野口五郎さん特許6091357「テイクアウトライブ」のビジネス
野口五郎さんの特許6091357「テイクアウトライブ」に関するビジネスですが、↓のHPの導入事例から見ると、非常に幅広く展開しているようです。
野口五郎さんは、ご自身のコンサートで「テイクアウトライブカード」を販売し、それを購入したユーザがユーザのスマートフォンなどでQRコードを読み取ることでの動画を視聴できるようにしています。
これだけではなく、様々なアーティストのコンサートでも「テイクアウトライブ」が取り入れられているようでした。
面白いのは、いわゆる歌手だけではなく、稲川淳二さんのような怪談をライブで行う方にも「テイクアウトライブ」のニーズがあるようで、導入事例に挙がっておりました。
上記の「テイクアウトライブ」のHPには載っておりませんでしたが、↓のHPによればあのDREAMS COME TRUEのコンサートでも「テイクアウトライブ」が導入され、コンサート会場で「テイクアウトライブカード」が販売されているそうです。
ファンであれば、「テイクアウトライブカード」、欲しくなりますよね笑。
野口五郎さん特許(特許6091357「テイクアウトライブ」)の経済的効果

上記のように「テイクアウトライブ」について、導入事例に挙がるくらいのビジネス展開をしているため、定量的にいうのは難しいですが、非常に大きな経済的効果があったといえるのではないでしょうか。
しかもこれだけのビジネス展開ができたことの要因の一つに「テイクアウトライブ」の特許出願(特願2013-134942)、あるいはその特許6091357があると僕は思います。
もともと野口五郎さんは「ライブの感動をそのまま持ち帰る」というコンセプトのもとに「テイクアウトライブ」を考え出したそうです。
しかも野口五郎さんは「自分がお世話になってきた音楽業界に恩返ししたいと強い思いはあります」と仰っているそうなので、おそらくはこの「テイクアウトライブ」を音楽業界に広めようと営業活動(PR活動)をされたのではないでしょうか(※ご本人ではないかもしれませんが)。
その際に
とPRするのと、
とPRするのと、どちらが説得力があるでしょうか。
正直にいえば、なんでもかんでも特許を出すような業界であれば、1件や2件の特許があってもただちに営業活動(PR活動)に効果があるとは言いにくいです。
しかし、今回のケースのような特許を出願する文化があまりないと思われる音楽業界で「テイクアウトライブ」というインパクトのある内容で特許を取得したことで、その営業活動(PR活動)に多少なりともインパクトを与えたのかなと僕は思います。
おそらく今回のNHK「ごごナマ」での特許6091357「テイクアウトライブ」への言及により、今後、「テイクアウトライブ」を導入したいと思うアーティストは多いのではないでしょうか。
本記事のまとめ
以上、野口五郎さんの「テイクアウトライブ」の特許6091357について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
そもそもの「ライブの感動をそのまま持ち帰る」というコンセプトの「テイクアウトライブ」自体が素晴らしいアイデアであったということがありますが、上記したように幅広くビジネス展開をされているということで、大成功の事例ですよね。
もちろん野口五郎さんがどのような契約内容で、特許6091357のライセンスを許可しているのかは分かりませんが、「音楽業界に恩返ししたい」ということからすると、もしかすると無償で(あるいは低額で)ライセンスを許可しているかもしれませんね。
いずれにしても野口五郎さんはご自身のコンサート会場で「テイクアウトライブカード」が売れるだけでなく、「ライブの感動をそのまま持ち帰る」ということは、ライブを自宅で視聴した際にアーティストグッズの購入にもつながりやすいそうなので、いくらでもマネタイズができるわけですね。
こういう成功事例もありますので、身近なところでも実はマネタイズにつながる特許のアイデアが皆さんにもあるかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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