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知財部とは?知財部の仕事内容(特許取得時からの期限管理)を説明します
こんにちは、ベテラン企業内弁理士のタクパパです。
前回は知財部のあまり知られていない重要な仕事として期限管理の一部(特許出願~拒絶査定)を説明しました。
↑の記事では拒絶査定不服審判まで請求しましたが、もしその拒絶査定不服審判がうまくいけば特許審決というものがでまして、晴れて特許を取得することが可能な状態となります。
今回はこの特許を取得することが可能な状態となってから、その後に必要となる期限管理について説明しますね。
つまり、特許を維持するために必要な期限管理のことでして、これも知財部にとっては重要な仕事です。
ちなみにこの特許維持の期限管理の仕事は特許事務所にとって、非常においしいお仕事になります笑。
特許登録時の期限管理(設定登録料)
ロバート秋山さん特許を例に特許登録時の設定登録料を説明
上記の記事では拒絶査定不服審判まで請求して特許審決が出た事例を説明しましたが、これはまれなケースで普通は特許査定です。
さて、めでたく特許査定(拒絶査定不服審判まで請求していれば特許審決)となった場合に、どのような期限管理が必要となるのか説明しますね。
特許査定や特許審決になったからといって特許を取得できたわけではありません。
当たり前といえばそうですが、特許を取得するためにはお金が必要なんですね。
そのお金のことを「設定登録料」といいまして、これにより特許庁がこの特許の設定登録をしてくれるわけです。
「設定登録料」を支払うことで、特許庁はその特許の内容が記載されている特許公報というものを発行して公開してくれます。
ちなみに↓は参考までですが、ロバートの秋山さんのあの「梅宮辰夫ものまねTシャツ特許」の特許公報(特許6366202)です。
https://patentimages.storage.googleapis.com/e1/b8/39/c6f99e54f93b40/JP6366202B2.pdf
それで気になる「設定登録料」の料金ですが、これは「特許請求の範囲」の「請求項」の数によります。
「特許請求の範囲」には発明の内容を一気に記載するのではなく、分けて書くのが普通でして、細かく分ければ分けるほど「請求項」の数が増えることになります。
秋山さんの↑の特許では請求項1~3まであるので、請求項を3つに分けて記載しているということですね。
「設定登録料」の料金は2019年11月9日現在、↓のように計算されます。
↑の×3ですが、これは設定登録から3年間、特許が維持されるという意味です。
なので、秋山さんの特許の場合、↓の通り8100円ですね。
意外に安いといっていいのではないでしょうか。
知財部にとっての特許登録時の期限管理(設定登録料)
上記した設定登録料は特許査定(拒絶査定不服審判まで請求していれば特許審決)からなんと30日以内に支払わないといけません(短いですよね)。
30日の納付期限が過ぎてしまえば基本的には特許は発生しません。
なんといっても特許を発生させるための手続なので、設定登録料の期限管理が知財部にとって極めて重要な仕事であることはいうまでもないですね。
特許登録後の期限管理(特許の年金)
ロバート秋山さん特許を例に特許維持のための年金を説明します
特許の年金ってご存じでしょうか?
特許は長くても特許出願から20年で権利が切れることが決まっています。
上記した特許庁の設定登録から20年ではない点は注意ですね。
なので上記のロバートの秋山さんの特許であれば、特許出願日が2016年9月3日なので、特許は2036年9月3日で特許が切れるということです。
それで上記した「設定登録料」を支払うことで特許が発生しますが、これだけで特許出願から20年が経過するまでずっと特許が維持されるのかというとそうではありません。
実は特許を維持するためには毎年、年金というものを支払わないといけないんですね。
この年金の金額は↓に示すように特許出願から年月が経過するほど、高くなっていきます。
これだけだとよくわからないので、ロバートの秋山さんの特許で年金を計算してみると、↓のようになります。
ただし、20年間の合計85万4500円となるまで支払い続ける必要があるのかというとそうではなくて、当然、特許が切れるまでです。
秋山さんの特許の場合、設定登録が2018年7月13日なので、2021年7月13日までの3年分(つまり第1年から第3年まで、8100円=2700円×3年分)は既に「設定登録料」として支払っています。
2021年7月13日以降も秋山さんが特許が必要であれば、2021年7月13日までに第4年の年金(7900円)を支払う必要がありますが、もう特許は不要ということであれば、年金の支払いをストップすればOKです(特許はそのタイミングで切れます)。
以降、毎年、次の年も特許が必要であれば、同じようにその年度の年金を支払うということですね。
最終年度は、2036年7月13日からで第19年ということになりますが、2036年7月13日までに第19年の年金(68300円)を支払っても特許は2036年9月3日で切れてしまいます。
ともかく秋山さんの特許の場合、最大でも(つまり2036年7月13日まで特許を維持する場合でも)第1年から第19年なので支払う年金の合計は786200円ということですね。
なお、第1年から第3年は上記した設定登録料として支払うので、786200円にはこの設定登録料も含まれています。
知財部にとっての特許の年金の期限管理
というわけで特許の年金の期限管理は毎年、毎年、必要になり、仮に年金の支払いを忘れてしまえば特許が切れてしまうため、大問題ということになります。
おまけに特許の設定登録の時期は特許ごとに異なるため、特許を何千件とか何万件とか多数、有する大企業であれば、年金の期限管理が大変であることは想像つきますよね?
なので、知財部にとって特許の年金の期限管理はやはり極めて重要な仕事ということができるわけです。
なお、この年金の期限管理については専門の企業(または特許事務所)が存在しており、その企業に頼んでしまうことも多いようです。
自動化できそうな気がしなくもないですが、仮に何万件もの特許の年金管理を依頼されたとして、1件当たり1万円の手数料だとすると、それだけで年間で億単位の収入になるので、これは安定収入でおいしいですよね笑
ただこれはそのうちにソフトウェアで代替されるような気がするので、このビジネスモデルはいつまでも続くものではないような気が個人的にはします。
本記事のまとめ
以上、特許登録後の期限管理に説明してきましたが、特許登録時の期限管理、また特許を維持するための年金の期限管理の重要性をご理解頂けましたでしょうか。
地味なのですが、意外に面倒で責任重大な仕事なわけですね。
今回は日本の特許の話のみをしましたが、外国の特許の年金の場合、各国でルールが違うので、さらに面倒な手続になります。
これはまた別の記事で書いてみたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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